理学療法×ピラティス。臨床に活かせるピラティスのニュートラルポジション。

ボディーワークで有名なのはヨガですが…
最近は、理学療法士・作業療法士の業界の中でも、ヨガ以外にもピラティスのことを知っている人も増え来ました。
そして、自分自身も2年前までピラティスのことを全く知らない無知の状態。
ピラティスを学んでみたのも興味本位。
興味本位でピラティスを学んでみて、
- 自分の身体の変化を感じることが出来る
- 理学療法と相性が良い
この2点を感じ、現在の臨床をするときにピラティスの考え方を取り入れながら臨床をやっています。
今回は、ピラティス×理学療法ということで臨床にピラティスメソッドを取り入れる方法の一部を紹介しようと思います。
目次
ピラティスとは?
ピラティスの知名度どんどん上がっていますが、
ピラティスって何なのっていう人もいると思うので超簡単にピラティスについて解説。
ピラティスは、ボディーワークの1つ。
ヨガは、比較的ストレッチ要素が多い。
ピラティスは、筋力トレーニングとストレッチ要素を掛け合わせたものになっているのが特徴。
ピラティスとヨガの選択の仕方
身体が硬い人で、硬いからストレッチをする。
多分、ストレッチをする時のほとんどが、持続伸張してストレッチする。
これがほとんどだと思います。
でも、持続伸張って硬い人にとってはめちゃくちゃ痛いですよね。
そこで、使えるのが筋の収縮を入れたり、運動療法の要素を入れることでストレッチにも繋がりヨガなどの持続伸張をしなくても、身体の柔軟性が上げることにも繋げることが出来る。
これが、ピラティスメソッドでは可能です。
臨床場面を想定したピラティスの活用方法
臨床の患者さんへのセルフケアの指導。
「ハムストリングスが硬いから毎日ハムストリングスをストレッチして下さい。」
こんな指導をしたとします。
やる人はやると思いますが…
硬いと伸ばすと痛いし、やりたくなくなって結局やらないという選択になる人もいるはずです。
そんな人に対して、
運動を使って柔らかくすることが出来れば続けてくれそうなこともあると思います。
運動を指導するだけでも十分に筋肉の柔軟性を出すことは可能です。
臨床での治療場面でもセルフケアの場面でも活用出るピラティスなので、全くピラティスを知らない人もこの機会に知って頂ければと思います。
ピラティスの基本肢位(ニュートラルポジション)
ピラティス知らない人も、ニュートラルポジションは知っておいた方が良いです。
ニュートラルポジションとは…
主動作筋・拮抗筋・固定筋・共同筋のアンバランスがなく、全てがバランス良く協調して働いているポジションがニュートラルポジション。
本来働くべき場所が働いているポジションがニュートラルポジション。
人が動くときには、主動作筋だけでなく、拮抗筋や固定筋など様々な動きが重なった結果として、1つの運動が生まれます。
その時に、
- 上手く関節運動が出ているか?
- 全身の連動性が出ているか?
- 筋バランスは適切か?
- 分離運動は可能なのか?
評価にもトレーニングにも使えるのがピラティスのニュートラルポジション。
共同運動と分離運動について
共同運動と分離運動ありますよね。
分離運動も共同運動もどちらも大切なわけですが、
基本的な考え方として、
- 分離運動ができれば共同運動も出来る。
- 共同運動はできるけど分離運動はできるとは限らない。
全てがこれに当てはまるわけではありませんが、臨床上の多くの方が共同運動が出来ていても分離運動が出来ていないという現状があります。
分離運動が必要な理由
例えばですが…
立位での体幹前傾動作
この体幹前傾で地面に手が付くために必要な機能として、
- 胸腰椎など背部のラウンド
- 骨盤の前傾
- 股関節屈曲
- 股関節内旋
- 膝関節伸展
これらの動きが合わさった結果が体幹前屈動作です。
筋肉の機能面で考えてみると、
- 頚部伸筋群の伸張性
- 胸腰椎部の伸張性
- 胸部・腹部の短縮方向への滑走
- 臀筋群の伸張性
- ハムストリングスの伸張性
- 下腿三頭筋の伸張性
まあこんな感じでしょうか。
これらのそれぞれの部分の機能が満遍なく機能していることで、初めて体幹前屈という動作が生まれます。
ですが、人間の身体の特徴として、
- 使っていない場所
- 使いやすい場所
この2つが人によって存在します。
そして、身体にエラーが起きる原因として、
- 使い過ぎ
- 使ってなさ過ぎ
この2パターンがほとんどだと思っています。
だから、
前屈動作の時に床に手が付くからOKではなく、各部分がそれぞれ機能しているかを評価することがセラピストとしては大切なポイントだと思っています。
前屈動作の時に、
「ハムストリングスが硬いけど床に手が付く」
もし、こんな人がいたとして、分離運動や関節単体での機能が低下している場合、
- 背部のラウンドを過度に大きくする
- 重心を後ろに下げる(大腿骨を傾斜させる)
- 臀筋群の伸張が過度になる
このような代償動作や使い過ぎの部分が必ず出てきます。
ハムストリングスが硬かったら、このような代償が出る前に単純に地面まで手が付けないという人もいると思いますが、少なからず代償動作やこのような使い過ぎている部分が出てきているのが事実です。
そのため、前屈動作だけに限らず、全身の運動は複合運動であるため、各部分がしっかり機能しているかを評価する上でも分離運動を評価する必要があり、この分離運動の評価ツールとして使えるのがピラティスのニュートラルポジション。
ピラティスのニュートラルポジション
仰臥位・伏臥位・側臥位・座位と色んな姿勢がありますが、基本的にどの姿勢においてもニュートラルポジション(全ての筋肉が協調して働いているポジション)はある程度共通しています。
ピラティスのニュートラルポジション
- 足と膝の幅は握り拳1つ分(坐骨結節幅)
- 第10肋骨〜ASIS〜恥骨結合が一直線
- 左右ASISと恥骨結合が床と平行
- 左右PSISと尾骨が床と平行(背面)
- 肩甲骨外転+下制した状態
- 乳様突起と肩峰が一直線
- 脳天と第7頚椎が一直線
これらの位置をキープした状態で運動が出来ることや、姿勢を保持することができればニュートラルポジションを保持することができているといえます。
普段の動作や姿勢からもニュートラルポジションから外れていることはありますが、意図的にニュートラルポジションに戻すことができれば問題はありません。
ただ、ニュートラルポジションから逸脱しているということは、筋肉のバランスがアンバランスになっているということになるため、それだけでも評価になります。
臨床でのニュートラルポジションの活用
姿勢評価・動作分析・運動療法
これらを臨床で行う際にニュートラルポジションを活用することができます。
例えばですが、
座位で行う股関節屈曲運動
股関節を屈曲する時には、
腰椎・骨盤・大腿骨が連動して動く必要があります。
しかし、大腿骨の動きが全く出ない状態になっていると、骨盤を過度に後傾させたり、腰椎を屈曲させたりして股関節屈曲を作っているということがあります。
関節可動域自体は、同じ角度動いていたとしても、適切な関節運動ではない状態。
この関節の複合運動を分離してトレーニングしたり、評価したりする際にニュートラルポジションが有効です。
目的とする部分を働かせるためにもニュートラルポジションを使うことでそれが可能になります。
ニュートラルポジションを使った評価・治療ポイント
ニュートラルポジションを使って、ムーブメント評価や運動療法に活用する際のポイントです。
肩関節屈曲の評価・運動療法をするとします。
その手順として、
- 頭の先〜足先までニュートラルポジションを取る
- ニュートラルポジションをキープした状態で肩関節屈曲
単純な様に感じると思いますが、
肩関節屈曲の際に起きやすい代償として、
- 肩甲帯の挙上
- 胸腰椎伸展
- 頭部前方変位
- 肩甲上腕関節の過剰移動・不動
- 肩鎖関節の過剰移動・不動
- 胸鎖関節の過剰移動・不動
つまり、
どこの動き出したいか。評価したいかによってニュートラルポジションの活用の仕方が変わってきます。
- ニュートラルポジションがそもそも取れない人は、その段階で筋のアンバランスがある。
- 肩関節屈曲の際に脊柱の過度な伸展がある人は、肩の動きを脊柱で補っている。
- 三角筋前部、前鋸筋、僧帽筋上部線維のフォースカップル機能が低下していると肩甲帯挙上する。
- 広背筋の短縮があると肩関節屈曲制限(上腕骨頭内旋位)
などなど…
ピラティスのニュートラルポジションのまとめ
ピラティスのニュートラルポジションの活用を1言で説明するとしたら、
評価においても運動療法においても、
ニュートラルポジションをキープして安定させた状態で目的の運動をする。
こういうことです。
理学療法×ピラティスという様に理学療法にピラティスを掛け算で使うことが出来るので是非、臨床の参考にしてもらえればと思います。
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