筋力トレーニングをする際に必ず押さえておきたいポイント!!何を考えて何のために筋力トレーニングを行うのか?

セラピストであれば臨床で必ずといっていいほど行う筋力トレーニング。
- 毎日腹筋100回しましょう。
- 下肢のキッキングを10回しましょう。
- 重りを使って膝関節伸展トレーニング。
こんなトレーニングしてませんか?
意味があるトレーニングであればいいですが、なぜその方法でトレーニングしているのか自分の提供している筋力トレーニングについて説明できますか?
筋力トレーニングは、しっかり解剖学・生理学・運動学の視点からトレーニング内容を組み立てる必要があります。
今回はセラピストであれば必ず筋力トレーニングをする上で押さえておきたいポイントをPICK UPしてお伝えします。
間違いだらけの臨床での筋力トレーニング
臨床での筋力トレーニングをする場面。
あなたは何を考えて訓練メニューを考えていますか?
- 「痛みが出ているのは筋力が弱いから」
- 「キッキング10回。腹筋10回。下肢集合屈曲10回。」
- 「MMT3しかない。筋トレしましょう。」
- 「大殿筋にはブリッジ運動。中殿筋には外転運動。腸腰筋には股関節屈曲運動。」
- 「教科書に書いてある通りの筋力トレーニング」
こんな訓練であれば、正直素人でもできます。
ただ、枠に当てはめて筋力トレーニングをしているだけです。
もっと考えましょう。頭を使ってメニューを考えましょう。
確かに…
- 教科書に書いてある筋力トレーニング。
- MMTの姿勢での主動作筋の筋力トレーニング。
これは間違いではないですが、それだけでは臨床では不十分ですし、筋力訓練1つにしてももっと考えなければいけません。
筋力トレーニングをする意味
まずは何のために筋トレをするかを考えなければなりません。
筋トレをすることが目的ではなく、
- 動作に活かすため。
- 日常生活に活かすため。
- スポーツに活かすため。
この様なことが目的になってくるはずです。
しかし、臨床では筋トレのための筋トレになっているケースが非常に多い気がします。
- 筋トレをした後の繋がりが無い。
- 筋トレのための筋トレ。
これでは、全く筋トレをする意味がありません。
臨床でよくある間違った筋力トレーニング集
あなたもおそらく今から紹介するようなことが臨床で当てはまる部分はないでしょうか?
主動作筋のことしか考えていない筋力トレーニング
- 大殿筋は股関節伸展
- 中殿筋は股関節外転
- 足関節背屈は前脛骨筋
これらは全て主動作筋です。
筋肉は主動作筋だけではありません。
下記で細かく説明しますが、筋活動の際は、拮抗筋があれば共同筋や固定筋もある。
もちろんですが、拮抗筋の機能障害があると主動作筋の筋発揮も低下しますし筋力低下も起こります。
実際に動作を行うときには単体での筋収縮をする場面などまずありません。
共同筋が必ず存在します。
動作を行う際は、動く場所と固定に働く場所が必ず存在します。
存在しないとまず人間は動けません。
求心性収縮ばかりの筋力トレーニング
これは僕が学生時代の実習の時から感じていたことですが…
- 筋力トレーニングをする際に求心性収縮しかしていない。求心性収縮ばかり。
- 筋力トレーニング=求心性収縮になっているセラピストの多さ。
求心性収縮が問題なら全然構わないと思いますが…
筋肉の収縮にも求心性収縮・遠心性収縮・等尺性収縮・等速性収縮など多くの収縮形態が存在します。
求心性収縮だけじゃないです。
むしろ、日常生活では遠心性収縮で働く場面の方が多いので、もっと遠心性収縮や他の収縮形態での筋発揮の状態など評価していく必要があるように感じます。
特定の肢位のみでの筋力トレーニング
- 大殿筋にはブリッジ運動
- 下腿三頭筋にはカーフレイズ
- 腸腰筋には下肢の集合屈曲
- 下肢伸展筋力にはキッキング
- 大腿四頭筋には重りを付けた膝関節伸展運動。
この筋肉の筋トレはこれ。この筋肉にはこの方法。これにはこれ。
訳の分からない方程式なのか何かの必勝法なのか知りませんが…笑
とにかく、パターンに当てはめているセラピストの多さ。
大体、実際の動作場面や日常生活場面において、そんな特定の肢位での筋発揮が求められる場面なんかまず無いです…
確かに、特定の姿勢での筋発揮は強くなるかもしれませんが、動作で全然機能しない筋トレになってしまっているということです。
アウターなのかインナーなのかはっきりしない筋力トレーニング
筋肉にもアウターマッスルとインナーマッスルが存在するわけですが…
筋力トレーニングをするときに、
- アウターマッスルなのかインナーマッスルなのか…
- どこへアプローチしているのか曖昧な状態のまま筋トレを行う。
- 回数や運動強度を曖昧なまま筋トレを行う。
基本的にはインナーマッスルを常に働かせることが大切で、アウターマッスルは必要なタイミングで必要な量が働けば良いとされています。
筋活動の際の動きの種類について
筋力トレーニングをする際にいくつか参考に出来る知識をお伝えします。
筋活動が生じる際にはそれぞれ筋の動きの種類が大きく分けて4種類あります。
①動筋(主動作筋・補助筋)
肘を曲げる時の上腕二頭筋が主動作筋。前腕屈筋群や円回内筋が補助筋。
②拮抗筋
膝関節伸展筋の主動作筋の大腿四頭筋に対して、ハムストリングスが拮抗筋。
股関節屈曲の主動作筋の大腰筋に対して、ハムストリングスや大殿筋が拮抗筋。
③固定筋(安定筋)
腕立て伏せの時の頚部伸展筋群が固定筋。
背臥位での頭頚部屈曲の際の腹筋群が固定筋。
④共同筋
歩行のICでの大殿筋・ハムストリングス・大腿四頭筋・前脛骨筋の共同収縮
着座動作での大殿筋・下腿三頭筋の共同収縮
このように人間が動作をするときには筋肉の動きの中にも最低でも4種類あります。
一部例を挙げましたが、どのような動作でもこの動筋・拮抗筋・固定筋・共同筋は存在します。
そのため、上記でも紹介しましたが、主動作筋だけでなく他の筋肉の動きなど、全てを関連付けて考えていくことが大切になってきます。
動画での解説はこちらから↓↓
筋肉の収縮形態の種類
①求心性収縮
筋肉が縮みながら収縮する。
コップを持ち上げる時の上腕二頭筋の収縮形態。
②遠心性収縮
筋肉が伸びながら収縮する。
コップを机に置く時の上腕二頭筋の収縮形態。
③等尺性収縮
関節の動きが生じない収縮。
壁を押し続けている時の上肢筋の収縮形態。
④等速性収縮
一定の速度での筋収縮。
水中での関節運動。器具を使用した筋力トレーニング。
筋肉の収縮は少なくとも4種類あります。
求心性収縮だけではないですし、色んな収縮形態があリます。
特に、遠心性収縮は日常生活や日常の動作でよく生じる収縮形態なので、1つの筋肉にしてもこの4種類それぞれでしっかりとした筋発揮が出来るのかを評価することが重要です。
1つの筋肉でもそれぞれの収縮形態をそれぞれの関節角度で収縮出来るか出来ないかを評価することが臨床では必要です。
動画での解説はこちらから↓↓
関節角度と関節の動きを考慮した筋力トレーニング
どの筋肉での共通して言えることです。
筋肉が筋発揮する上でも関節角度によって作用が全く違ったりするわけです。
関節も、屈曲位・伸展位・内旋位・外旋位などなど…
いろんな関節の動きがあるわけです。
だから、屈曲位では筋発揮出来ていても伸展位になると全く力が入らなかったりということが臨床では多々あることです。
しっかり各関節の動きや関節角度での筋力の評価をしましょう。
筋肉の正作用と反作用について
どの筋肉も必ず起始と停止から筋肉は構成されています。
- 停止が起始に向けて動く → 正作用
- 起始が停止に向けて動く →反作用(リバースアクション)
一般的な筋肉の収縮は停止が起始に向けて動きます。それに対して、停止が起始に向けて動く真逆の動きをリバースアクションと言います。
例えば…
股関節外転運動での中殿筋は骨盤に対して大腿骨が動くため、停止が起始に近く正作用の動きです。
それに対して、歩行の立脚期での中殿筋の役割は、荷重位で下肢自体が固定されている。つまり大腿骨が固定されている。固定された大腿骨に対して、骨盤は下制しないように中殿筋の収縮で骨盤の位置を安定させます。
大腿骨の停止部が固定された状態で起始部である骨盤が動く。起始が停止に向けて動く。
これが、リバースアクション(反作用)です。
筋力トレーニングを臨床で行う上で考えること
筋力トレーニングで考えていくべきことを動画で解説。
他にも考えていくべきことはあると思いますが、その一部をご紹介します。
動画はこちらから↓↓
間違いなく言えることは、
筋力トレーニングは手段の1つであって最終的な目的は日常生活や動作。
これをしっかり考えた上で筋力トレーニングをしていきましょう。
運動療法のバリエーションを増やす方法
- 支持基底面
- レバーアーム
- 重心の高さ
- 課題数
- 収縮形態(求心性・遠心性・等尺性)
- レンジ(可動域・可動範囲)
- 回数(筋肥大・筋持久力)
これを組み合すことで運動療法のトレーニング、エクササイズのバリエーションを増やすことが出来ます。
まとめ
- 筋トレのための筋トレにならないように
- 日常生活や動作に繋がる筋力トレーニングを行う
- 収縮形態を考えて筋力トレーニングを行う
- 筋肉の動きを考えた筋力トレーニングを行う
- 正作用とリバースアクションを考えた筋力トレーニングを行う
お伝えした内容を参考に筋力トレーニングを考えてみてください。
まずは分からなくても考えることが大切だと自分自身も感じています。
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