学校では教えてくれない。セラピストが知らない「胸椎アプローチ」の評価・治療の考え方。

学校では教えてくれないシリーズ。
今回は、胸椎アプローチ!!
臨床で、胸椎の可動性が低下している人は非常に多いのが現状です。
そして、胸椎の可動域域制限が生じる事で、胸椎周囲の筋力低下にも繋がります。
しかし、普段から使う頻度が少ない胸椎レベルの動きを出そうとすると、代償動作が生じやすい。
セラピストとして、運動療法を提供する立場からしても、しっかりと代償動作を見抜いて、適切に胸椎レベルにアプローチすることが大切になります。
今回は、臨床的な考え方で、胸椎へのアプローチ方法をお伝えします!!
目次
多くの人の脊柱の動きの特徴と代償動作
多くの人が胸椎レベルの動きが全く出ないのが現状。
そして、胸椎レベルの可動域制限が生じると、どこで胸椎レベルの動きを補って代償をするかというと、
- 頚椎
- 腰椎
この2つが非常に多いです。
胸椎の上下には頚椎と腰椎があります。
どこの関節にも共通しているポイント。
関節の特徴上、問題がある関節と「隣合う関節」や「近い場所の関節」で代償することが多いとされています。
よく首が前に出て猫背姿勢になっていたり、腰椎すべり症だったり腰痛がある人など、痛みが出ている原因は胸椎レベルの動きが制限されているために、代償として長年使った結果が頚部や腰部に症状が出ているケースが非常に多い。
胸椎の制限されやすい動きと可動域制限による問題点
胸椎の可動域制限ですが、
- 伸展
- 回旋
この2つの動きが特に制限されやすい。
屈曲に関しては、制限が生じている人もいますが、伸展と回旋に比較すると獲得できているケースが多いです。
胸椎の回旋においては…
胸椎で回旋が作れない分、腰椎で体幹を回旋させようとします。
でも、腰椎の関節の構造上、回旋系の動きには弱く、屈曲と伸展の動きが本来メインの動き。
関節が本来動かない方向に無理に動かして、腰椎で回旋の代償をしようとするため腰痛など腰部疾患にも繋がります。
胸椎の伸展に関しても…
胸椎で伸展が作れない
↓
胸椎が屈曲位になる
↓
相対的にカウンターで頚部が伸展位になって頭部が前方突出位になる
↓
背部筋群伸張位・頚部後面短縮位
↓
背部筋の筋力低下・頚部後面の筋緊張亢進
そして、胸椎の可動域制限や筋力低下が生じることで…
- 腰痛(腰部疾患)
- 肩こり・首こり
- 猫背・反り腰
- 上肢の可動域制限
- 下肢外旋傾向(膝OA)
- 呼吸機能への影響
- 胸郭の機能障害
などなど様々な全身への影響があります!!
臨床で胸椎の可動域を獲得するポイント
胸椎の可動域を出していく時の絶対条件です。
外腹斜筋の収縮が入ること!!
これは、求心性にも遠心性にも様々な収縮形態で作用できることが必要です。
もし、筋肉で考えるのであれば、筋肉には、
主動作筋・補助筋・拮抗筋・共同筋・固定筋(安定筋)など様々な筋群が働くことで目的の動作を行うことができます。
胸椎の動きは基本的に後面の筋肉がメインで働いで生まれる動きのため、前面の筋肉がしっかり固定に働き、遠心性収縮で使えることで初めて胸椎の動きを出すことができます。
胸椎レベルだから、前面の固定筋は大胸筋など胸の筋肉ではないかと思われがちですが、大胸筋を作用させてしまうと肩甲骨が外転位になり運動連鎖で胸椎が屈曲方向に誘導されてしまいます。
そのため、大胸筋の収縮は過剰に入らないようにした状態で、外腹斜筋を働かせることがポイントとなってきます!!
胸椎の可動性を出すための筋膜ラインとの関係性
- フロントライン → 短縮位
- バックライン → 伸張位
このような状態になっているケースが多いです。
そして、アプローチをしていく際の順序として…
フロントラインの長さを出す
(フロントラインを緩める)↓
バックラインの収縮を入れる
(特に僧帽筋中部繊維周囲)
基本的には、筋膜ラインや短縮筋、伸張筋で考えるのであれば上記の順序で治療を進めた方が効果的なことが多いです。
頚部・腰部のアライメントから診た胸椎アプローチ
上記でもお伝えしたように、
胸椎の可動域制限があると頚部・腰椎で代償をしやすくなります。
だからといって、
胸椎レベルへ直接アプローチすれば頚部や腰椎のアライメントが完全に治るかと言われたら臨床では、中々上手くいかないケースが多いように感じます。
目的としては、
胸椎の可動域を向上させたり、胸椎周囲の筋力向上を図りたい場合でも…
頚部・腰部のアライメント修正
↓
胸椎へアプローチ
このような順序でアプローチした方が改善が図れることも多いので参考にしてみて下さい。
実際は正解はなく、仮設して検証してみるしかないのが事実です!!
外腹斜筋の遠心性トレーニングを紹介
【外腹斜筋のトレーニング方法】
求心性収縮だけではなく、筋肉は遠心性収縮で使える事が重要です。
ポイントは、両方の肩甲骨が地面に付いて、胸骨が天井を常に向いた状態で下肢を左右に動かすこと。
あとは、第10肋骨とASISの高さが平行で腰椎の代償が出ない様に注意して行う事が大切です。 pic.twitter.com/Opu4CPqGBh
— 薬師寺 偲 Shinobu Yakushiji (@gmawgmaw) March 17, 2018
ポイントは胸骨・肩甲帯は固定した状態で下肢だけ左右に動かすようにすること。
外腹斜筋の力を抜くと腰椎を伸展させたり、回旋の代償に使いやすいので腹部には力を入れたまま下肢を左右に動かすようにすることが大事。
あと、呼吸は脚を左右に倒すときに吸気。
正中位に戻すときに呼気で行うことが大切です。
胸椎伸展を出すためのエクササイズ
- リバースプランク
ポイントは、
- お腹が出ないこと(第10肋骨とASISと恥骨結合が平行になっていること)
- 胸骨を前に出すイメージ(胸を貼る)
- 胸の前面を広げる(鎖骨を横に広げるイメージ)
- 肩甲骨の内転があまり入らない様に気を付ける
- 足を伸ばしてするのが大変な場合は膝関節屈曲位で足底を設置して行う。
目的としては、
胸椎の伸展を出すこと!!
よくある代償が、腰椎を伸展させて伸展を作ろうとしてしまうため、お腹が前に出ない様にしっかりと前面の腹斜筋群を働かせておくのがポイントです。
- スワンダイブ(修正)
ポイントは、
- 腰椎で伸展を作らないこと(腹部前面筋の腹斜筋の力を持続的に入れておく)
- 胸骨を前に見せるイメージ
- 背中の胸椎レベルに筋収縮が入るイメージ
- 肩の力を抜く
- 伸展を出すときに呼吸の吸気で行う
- 鎖骨の前面を広げる(肩甲骨内転が入らない様に)
このエクササイズも腰椎での代償が入りやすいです。
しっかり腹斜筋群を持続的に働かせた状態で胸椎伸展を出していくことがポイントです!!
このエクササイズも目的は、胸椎伸展を出すこと!!
どのエクササイズでも共通していますが、目的を明確にしてトレーニングをすることが大切です。
胸椎回旋を出すためのエクササイズ
- シーテッドツイスト(修正)
ポイントとしては、
- 胸椎を伸展位で回旋を行う
- 骨盤後傾しないように(後傾する場合はあぐらで)
- 腹斜筋を持続的に収縮させた状態で回旋
- おへそは常に前面を向く
- 胸骨だけが回旋
エクササイズの目的は、
胸椎の回旋を出すこと。
このエクササイズも腰椎で回旋しやすいため、常におへそは前面に向けて腹斜筋の持続的収縮を入れたまま回旋をすることが大事です。
胸椎とおへそが真逆方向に動かすイメージが持てればOKです。
(体幹部をツイストさせる。)
まとめ
胸椎の可動域制限や胸椎周囲の筋力低下が生じている症例めちゃくちゃ多い。
そして、胸椎に制限あると、関係のなかったはずの場所に痛みや痺れなどの症状が出てくるので胸椎をある程度動く状態にしておくことは大事です。
あと、胸椎の可動域出てくると姿勢めちゃくちゃ良くなるので、
伸張が数㎝伸びたりすることも実際にありますよ!!
それぐらい胸椎大事なので、
自分の胸椎の動きはもちろんですが、患者さんにも参考にしてアプローチしてもらえればと思います。
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